一人暮らしで節約しようと思っても、食費を切り詰めたり、欲しい物を我慢したりするのは長続きしにくいものです。そこで最初に取り組みたいのが、毎月ほぼ決まった金額が出ていく「固定費」の見直しです。
固定費のよいところは、一度見直せば、その後は特に意識しなくても節約の効果が続きやすいことです。手が止まる原因は、手続きの面倒さよりも、どこから手をつけるかが決まっていないことにあります。
がまんする節約が続かなかった人にこそ、固定費の見直しを試してほしいと思います。手続きが面倒そうに見えるものも、手間の少ないところから始めれば、無理なく進めやすくなります。そもそも「固定費」とは、どこまでの支出を指すのでしょうか。
固定費とは?見直すと節約が続きやすい理由
家計の支出は、大きく「固定費」と「変動費」に分けられます。
- 固定費: 家賃、スマホ・インターネットの通信費、保険料、サブスクの料金など、毎月ほぼ決まった金額がかかる支出
- 変動費: 食費、日用品費、交際費、趣味の費用など、月によって金額が変わる支出
電気代やガス代は使った量によって金額が変わりますが、契約内容で基本料金や単価が決まるため、ここでは固定費の見直しとあわせて扱います。
食費などの変動費を節約するには、毎日の買い物で意識し続ける必要があります。一方、固定費は一度契約を見直せば、翌月以降も同じ金額が下がった状態が続きます。「我慢」ではなく「仕組み」で節約できるため、忙しい人や節約が苦手な人ほど、固定費から見直すのがおすすめです。
一人暮らしの固定費の平均
平均の金額は、自分の固定費の高い低いを決めるものではなく、見直す場所の見当をつける物差しになります。家計調査の数字と、自分で書き出した支出を並べて比べてみてください。
家計調査で見る、一人暮らしの1か月の支出
総務省の「家計調査」(2025年)によると、単身世帯のうち、会社員などの勤労者世帯(世帯主の平均年齢43.3歳)の1か月の消費支出は、平均191,523円でした。このうち、固定費に関係の深い項目は次のとおりです。
| 項目 | 1か月の平均 | 消費支出に占める割合 |
|---|---|---|
| 住居 | 30,327円 | 15.8% |
| うち家賃・地代 | 28,062円 | 14.7% |
| 光熱・水道 | 11,222円 | 5.9% |
| うち電気代 | 6,033円 | 3.2% |
| うちガス代 | 2,829円 | 1.5% |
| うち上下水道料 | 1,862円 | 1.0% |
| 通信 | 6,943円 | 3.6% |
※総務省「家計調査 家計収支編 単身世帯」2025年の結果より。住居費(家賃・地代)の平均には、持ち家に住んでいて家賃を払っていない世帯も含まれているため、賃貸住宅に住んでいる人の実際の家賃は、この平均より高くなるのが一般的です。

平均はあくまで目安で、住んでいる地域や住まいの種類、働き方によって大きく変わります。平均より高いから悪い、低いから良いというものではありません。自分の支出のどこに見直しの余地がありそうかを探す、物差しの1つとして使ってください。
まずは自分の固定費を書き出す
平均と比べる前に、自分の固定費を書き出してみましょう。銀行口座の引き落とし履歴や、クレジットカードの利用明細を見ると、毎月決まって引き落とされているものが分かります。
- 家賃(管理費・共益費を含む)
- スマホの料金、自宅のインターネット回線の料金
- 電気代、ガス代、水道代
- 保険料(生命保険、医療保険など)
- サブスク(動画・音楽配信、アプリ、クラウドストレージ、ジムや習い事の月会費など)
年払いや数か月ごとに引き落とされるものは、1か月あたりの金額に直すと比べやすくなります。書き出してみると、「こんなサービスに入っていたのか」と、忘れていた契約が見つかることもあります。カード払いや口座からの引き落としが多い人は、家計簿アプリを使うと、毎月決まって出ていくお金をまとめて確認しやすくなります。
家計簿アプリの選び方は、次の記事で紹介しています。

固定費を見直す順番
固定費の見直しは、次の順番で進めるのがおすすめです。手間が少なく、すぐに結果が見えやすいものから始めて、手続きに時間がかかるものは後に回します。

- サブスク・会員サービス: 解約するだけで済み、手間が最も少ない
- 通信費: プラン変更や乗り換えの手続きは必要だが、ネットで完結しやすい
- 電気・ガス: 契約の見直しや会社の切り替えは申し込むだけで済むことが多い
- 保険: 保障内容を理解する必要があり、見直しに時間がかかる
- 家賃: 金額は最も大きいが、引っ越しや交渉が必要で、タイミングが限られる
一度に全部やろうとすると大変なので、1か月に1つずつ見直すくらいのペースでも十分です。
1. サブスク・会員サービスを見直す
動画配信、音楽配信、アプリの有料プラン、クラウドストレージ、ジムの月会費など、毎月少額ずつ引き落とされるサービスは、気づかないうちに増えがちです。1つひとつは数百円〜千円台でも、いくつも重なると大きな金額になります。
見直しのポイントは次のとおりです。
- この1か月で使ったかを確認する: 使っていないサービスは解約の候補です
- 同じようなサービスに重複して入っていないか: 動画配信サービスを複数契約している場合は、よく見る1つに絞ることも考えられます
- 必要な時期だけ契約する: 見たい作品があるときだけ契約し、見終わったら解約する、という使い方もあります
- 年払いと月払いを比べる: 長く使い続けると決めているサービスなら、年払いのほうが割安になる場合があります
無料体験の期間が終わると自動で有料プランに切り替わるサービスもあるため、申し込んだときに終了日をカレンダーなどにメモしておくと、気づかないうちに課金が始まるのを防げます。
2. 通信費を見直す
スマホの料金は、ほかの会社へ乗り換えなくても、今の会社でプランを変えるだけで下がることがあります。乗り換えるかどうかは、今の使い方を確かめてから決めても遅くありません。
まずは今のプランを確認する
スマホの料金は、使っているデータ量や通話の頻度に合ったプランになっていないと、必要以上に払っていることがあります。総務省の携帯電話ポータルサイトでも、乗り換えを考える前に、次のような点を確認することがすすめられています。
- 毎月使っているデータ通信量
- 通話の頻度と通話料
- 加入しているオプション(使っていないオプションがないか)
- 家族割や、自宅のインターネット回線とのセット割などの割引
まずは契約中の会社で、データ量に合った安いプランに変更したり、使っていないオプションを外したりするだけでも、料金が下がることがあります。
乗り換えるときの手数料と注意点
今の会社のプランで合うものがない場合は、ほかの会社への乗り換えも選択肢になります。今の電話番号をそのまま使える「番号ポータビリティ(MNP)」を利用すれば、番号を変えずに乗り換えられます。
総務省の携帯電話ポータルサイトによると、乗り換えにかかる主な費用は次のとおりです。
| 費用 | 内容 |
|---|---|
| MNP転出手数料 | ウェブサイトでの申し込みは無料。電話や店舗では1,100円以下の手数料がかかる場合がある |
| 違約金 | 契約期間の決まったプランを途中で解約すると発生することがある |
| 契約事務手数料など | 乗り換え先で、契約事務手数料やSIMカード代として概ね3,300円前後がかかる場合がある |
また、スマホ本体を分割払いで購入している場合は、乗り換えても残りの支払いは続きます。乗り換え先で今のスマホをそのまま使えるか(対応しているか、SIMロックがかかっていないか)も、事前に確かめておく必要があります。

2023年5月からは、乗り換え先の会社のウェブサイトで申し込むだけで手続きが進む「ワンストップ方式」も始まっています(対応している会社間に限ります)。
楽天モバイルは毎月のデータ利用量に応じて料金が決まるので、最初に書き出したデータ通信量と、今のスマホがそのまま使えるかを、申し込む前に見比べておきます。
自宅のインターネット回線も確認する
自宅に光回線などのインターネット回線を引いている場合は、その料金も見直しの対象です。スマホのデータ通信だけで足りる使い方なら、回線を解約するという選択肢もあります。逆に、自宅でよく動画を見たり、在宅勤務をしたりする場合は、スマホのプランを小さくして自宅の回線を使うほうが合っていることもあります。スマホとセットで割引になる組み合わせがあるかも、比べるときの材料になります。
3. 電気・ガスを見直す
電気代を下げる手は、今の契約を使い方に合わせることと、電力会社を替えることの2つ。ガスは、都市ガスかプロパンガスかで、自分で会社を選べるかどうかが分かれます。
契約内容と使い方を確認する
電気代は、使った量だけでなく、契約内容によっても変わります。地域や電力会社によっては、契約アンペア(同時に使える電気の量)によって基本料金が変わる料金プランもあります。一人暮らしで同時に使う家電が少ないなら、契約アンペアを下げることで基本料金が下がる場合があります。ただし、下げすぎると、電子レンジとドライヤーを同時に使ったときなどにブレーカーが落ちやすくなります。
電力会社を切り替える
2016年の電力小売の全面自由化によって、家庭でも電力会社や料金プランを自由に選べるようになりました。資源エネルギー庁によると、切り替えは、切り替え先の電力会社に申し込むことで手続きが進みます。
- 電気の使用量を自動で計測する「スマートメーター」が設置されていない場合は、交換が必要になります。交換は原則として費用はかかりませんが、工事に費用がかかる場合もあります
- 切り替えにかかる期間の目安は、スマートメーターの交換工事が不要な場合でおよそ4日程度、交換工事が必要な場合でおよそ2週間程度です
電力会社を選ぶときは、電気の単価だけでなく、基本料金、契約期間や解約時の費用の有無、ほかのサービスとのセット割なども比べます。自分の使用量に近い条件で試算してから選ぶのが確実です。なお、賃貸住宅でも、個人で電気の契約をしている場合は、多くの場合自分で電力会社を選べますが、建物全体で一括して契約している場合は選べないこともあります。
電気料金を比べるときは、エネピのような比較サービスを使う方法もあります。郵便番号や毎月の電気代などを入力すると、料金のシミュレーションができます。
都市ガスもガス会社を選べる地域がありますが、プロパンガス(LPガス)の場合は、賃貸住宅では大家さんや管理会社がガス会社を決めていることが多いため、個人で切り替えるのは難しい場合があります。
4. 保険を見直す
どこまで保険で備えるかは、公的な医療保険でどこまでまかなえるかを知ってから考えると、決めやすくなります。
公的な保障を知ってから考える
保険は、保障の内容を理解する必要があるため、見直しに少し時間がかかります。まず知っておきたいのが、会社員などが加入している公的な医療保険の保障です。
公的な医療保険には「高額療養費制度」があり、医療機関や薬局の窓口で支払う医療費が1か月の上限額を超えた場合、超えた分が支給されます。厚生労働省の例では、70歳未満で年収約370万〜約510万円の人が100万円の医療費がかかる治療を受けた場合、自己負担は約9.3万円で済む計算です。
※高額療養費制度は、2026年8月から月ごとの上限額が見直され、1年単位の上限額(年間上限)も新しく設けられました。2027年8月にも見直しが予定されています。最新の上限額は、厚生労働省や加入している健康保険のホームページで確認できます。
保障が重複していないか確認する
公的な保障があることを踏まえたうえで、今入っている保険の内容を確認しましょう。
- 同じような保障の保険に重複して入っていないか
- 一人暮らしで扶養する家族がいない場合、死亡保障が今の生活に合った金額か
- 勤務先の福利厚生や、クレジットカードの付帯保険などで、すでにカバーされている保障がないか
保険が必要かどうか、どのくらいの保障が必要かは、貯蓄の額や健康状態、家族の状況によって人それぞれです。解約してから新しい保険に入り直そうとしても、年齢や健康状態によっては同じ条件で加入できないこともあります。解約や切り替えを考えるときは、保険会社や専門家に相談しながら、慎重に判断しましょう。
5. 家賃を見直す
家賃は、一人暮らしの固定費の中で最も金額が大きい項目です。ただし、ほかの固定費のように思い立ってすぐ変えられるものではないので、見直すタイミングを逃さないようにします。
- 更新のタイミング: 賃貸契約の更新時期は、住み続けるか引っ越すかを考えるきっかけになります。更新料や、周辺の同じような物件の家賃も調べておくと、判断の材料になります
- 引っ越すとき: 家賃を下げるために引っ越す場合は、引っ越し費用や敷金・礼金、仲介手数料などの初期費用もかかります。家賃の差額で初期費用を何か月で回収できるかを、先に計算しておきます
- 家賃の目安: 家賃は手取り収入の3分の1程度まで、という目安がよく言われますが、ほかの支出とのバランスによって無理のない金額は変わります
家賃以外にも、住まいに関する固定費として、火災保険(家財保険)や、駐車場・駐輪場の料金などがあります。賃貸の火災保険は、契約時に指定されたものに入ることが多いですが、自分で選べる場合もあるので、更新のときが見直す機会になります。
固定費を見直すときの注意点
料金が下がることばかりに目が向くと、違約金や使い勝手の面で、かえって損をすることがあります。
- 違約金や解約のタイミングを確認する: 契約期間の途中で解約すると、違約金がかかる場合があります。契約の更新月や、解約の締め日も確認してから手続きします
- 安さだけで選ばない: 料金が安くても、通信速度やサポート、補償の内容が自分の使い方に合っていないと、かえって不便になることがあります
- 1つずつ進める: 複数の契約を同時に変えると、どこで何を変えたか分からなくなりがちです。見直した内容と金額をメモしておくと、あとで効果を確認しやすくなります
- 見直した分の使い道を決める: 浮いたお金は、自動で貯蓄用の口座に移すなど、使い道を決めておくと、なんとなく使ってしまうのを防ぎやすくなります
まとめ
固定費は、一度見直せば翌月からも下がった金額が続きます。手間の少ないサブスクから始めて、通信費、電気・ガス、保険、家賃へと、1か月に1つずつ進めれば十分です。違約金や解約の締め日は契約ごとに違うので、手続きの前にそこだけは見ておいてください。
浮いたお金は、貯蓄用の口座へ自動で移すなど使い道を決めておかないと、なんとなく使って消えてしまいます。

